もう1年以上前に高齢の男性からご相談の電話をいただきました。
他のどちらかへご相談なさって、紹介をされたのだということでした。
奥様がパーキンソン病で80代のお二人暮らしです。
自宅でご主人がお世話をされていたのですが、どんどんと状態が思わしくなくなり、困り果ててのご相談でした。
様々な奥様の状態や生活の不便さ、どうしたら良いのかわからないご主人の行き場のない気持ちなど、お話しをされる内に突然泣き出されていました。
ご主人は自分で事業をされていて、若い頃は活況を呈していたのだと思われます。今はお子様に継承されているそうです。
家事などやったこともない、まして奥様の身の回りの世話や排泄のことなど、なんとかヘルパーさんの助けを借りてこなしてきたものの、心も体も限界にきていたようです。
他の介護者の様子を知りたいということで、重度のパーキンソン病の奥様をお世話なさっているお宅へご一緒しました。
そこのご主人はとても知識力、理解力が高いので社会資源を上手に使いこなされています。
ご相談者のご主人は先方の奥様がほぼ寝たきりで、話すことも出来ず、排泄も医療支援を受けておられることに驚き、愕然とされていました。
それでも家族に協力を申し出たり、病院や施設を訪ね歩いたり、入院中は手作りの食べ物を持参し、洗濯物を持ち帰ったりと一生懸命でした。しかし、奥様は徐々に気力がなくなっているようでした。
一年も経たない間に入院から胃瘻、施設入所となったようです。
その後、ご主人からご連絡はありません。
私が見えなかったことは、奥様やご家族のお気持ち・・・
病気の陰に隠れている願いや思い、悲しみ、怒り。
もしかしたら、話し合ってその感情をぶつけ合うことで、成就されたり解消されることはあるのかもしれません。
病気の症状やお世話の大変さ、経済的なことなど「見えること」だけに捕らわれてしまいがちです。ご本人やご家族、周りの支援者の方を巻き込んで「見えないこと」(気持ちだけでなく、自分が知らないことも含めて)を見つけることも必要かと思います。
気持ちが楽になれば、優しくなれます。
「見えないこと」を見つけに行きましょう。
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