高齢発症・後期パーキンソン病のお薬のはなし(ある講演会から)

パーキンソン病患者さんは高齢化に伴い増加傾向にあることは周知ですが、今や「パーキンソン病パンデミック」と言われるように、世界では2015年から2040年の間に2倍の患者数になるという推測がされていますので、日本でも同じく、または高齢者率の高い日本ではそれ以上に増加することも予想されます。

 

高齢発症(概ね70歳以上)の方は、進行が早く、生存期間が短い、姿勢バランス障害、動きが緩慢で硬い、転倒、すくみ足の増加、抑うつ、認知機能低下がQOL(生活の質)を下げます。非運動症状も顕著で日中眠気、複視、注意・記憶障害、胃腸・泌尿器障害、味覚・嗅覚低下の重症度が高いとされています。

したがって認知機能、情動機能(人の痛みがわかる思いやりや、人間性など社会生活を円滑に進めるための知能)やADL(日常生活動作)の改善がQOLを上げることになります。

 

高齢発症の場合Lドーパ剤が効きにくいとされていますが、ウェアリングオフやオン・オフ現象、ジスキネジアが出にくい事を考慮すると、アゴニストなどで精神症状などの副作用で困るよりもLドーパ剤を効果的に活用していくほうが良いとされています。

高齢者の場合は激しい精神症状が出現すると薬の調整がむずかしくなるようです。

そこでオフ時間の短縮や運動症状の改善、認知・情動機能改善など症状の進行を抑制することが期待できるとしてMAO-B阻害薬(ラサギリン)が評価されています。

<新規パーキンソン病治療薬ラサギリンメシル酸塩(アジレクト®錠)の薬理学的特徴と臨床効果 永井 将弘 1,服部 信孝>参考

運動症状と非運動症状を総合的に判定するUPDRS評価によって症状が改善され、パーキンソン病のQOLが改善されたという評価(PDQ-39)が確認されたそうです。

ただしお薬の副作用やパーキンソン病症状の個人差などから、お薬の調整は主治医の先生とよく話し合って決めてください。

 

そしてお薬だけでなく高齢でも重症度が高くなっても「運動」の効果はゆるぎないものがあります。

硬くなることを防ぐためにも身体全体のリハビリテーションが重要ですが、お口回り(嚥下障害、構音障害など)や手足の先などできることは数多くあります。

少しでも運動機能を改善してQOLを維持するために考えていきましょう。

なんか当たり前のことですが、動きが良くなると毎日が楽しくなるということです。